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マツダ(株)代表取締役社長:ルイス・ブース氏講演「日本インターナショナル自動車ラウンドテーブル」

【ルイス・ブース代表取締役社長兼CEO】

皆さまこんにちは。

本日このような催しを開いてくださったエコノミスト協議会の皆様にも感謝いたします。

私たちの業界は、いま大きな変革の真っ只中で、さまざまな課題に直面していますが、そのいくつかをここでお話しできるのはまたとないことです。

このような機会を与えていただき、私個人としても、とくに光栄に思います。マツダを代表して公の場で話をさせていただく初めての機会でもあるからです。


さて、皆さんさぞお疲れのことでしょうが、その一方では非常に得るところの多い一日でしたが、その最後に、私が世界の産業にとって非常に重要と考える問題について、いましばらくご傾聴下さるだけの余力を残しておられればよいのですが・・・その問題とは、大きいことは良いことだということが、どこまで当てはまるのかということです。

自動車業界では、巨大な世界的グループへの再編が続いていますが、あらゆる面で「大きいことはよいことだ」と理解するのが一般的なようです。

確かに、大きさには否定できないメリットがあります。しかし、規模がすべてなのでしょうか?


本日は、なぜ私が、規模の大きさがあらゆる問題の解決にはならないと考えているのかを、ご説明したいと思います。

そして、中規模な企業が巨大企業に伍していくには―ある二つのものを手にしていれば、という条件がつきます。

その二つとは、戦略的重点指向、そして、適切な提携です。


しかし、まずは、否定のしようがない、規模のメリットについて考えてみましょう。

何にもまして、規模の大きさは、多大のスケールメリットと世界的な広がりとを可能にします。

現代の自動車業界で世界的に競争してゆくためには、巨大な資金が必要です。

例えば商品開発です。技術変革が急激で、かつてないほど政府の規制が強化されているこの時代、自動車メーカーが長期に亘って競争力を維持するには、何年にも亘り非常に大規模なR&D活動を展開できる資金がなければなりません。

また、巨額のマーケティング及び広告予算をかけて、世界的にブランドイメージを確立するに足る資金も必要です。

規模が大きければ購買力も大きくなります。しかも、今日では、部品コストは、競争力にとり決定的に重要です。

以上すべての理由から考えますと、規模の大きさは、疑いもなく自動車メーカーにとって大きなアドバンテージです。


しかし、です。

…もし規模がすべてを決定付けるのであれば、かつて世界最大の国家だったソ連が崩壊することはなかったでしょう。恐竜もしかりです。そして、先頃のワールドカップでは、世界の強豪を相手に、日本や韓国のような新興勢力が驚くほどの挑戦をしたのを目のあたりにしました。

地政学、自然界、スポーツの分野では、明らかに規模のみが結果を決定付ける要因とはなっていません。

自動車業界の競争でも同じことが言えるでしょう。


では、規模以外の何なのでしょうか?

急激な変化の時代には、適応する能力と進化する能力がものをいいます。

生物の種族であれ、国家であれ、また企業であれ、生き残るうえで決定的に重要な要素が三つあります。

有り体に申しますと、第一に飢えと恐怖です。食物が豊富で、外敵もいない場合には、どんな生物や企業も、基本的なものごとのやり方を変えようとはしません。余計なことだ。壊れてなければ修理するな。皆そう言うでしょう。

しかし、迫り来る飢餓や危険が、まだ適応し進化する時間的余裕がある間に、組織の各メンバーにはっきりと実感されるようになった場合には、 強力な変革の推進力を全開にするチャンスが残っています。

第二はビジョンです。新たな、また合理的な進化・発展への途を見分ける能力です。

このビジョンには、自分自身の強みと弱点を非常に明確に認識すること、環境がどのように変化しつつあるか明快に理解すること、自分の前に開けているチャンスに、きわめて適切に定義した焦点を合わせることが必要です。

このビジョンの明確さ、戦略的な重点指向がなければ、どんな変革への意図もすべて無に帰してしまいます。

ビジョンは、規模が大きくなるほど鋭くなるというものではありません。実際は、規模が大きくなるほどビジョンを明確化するのが困難になることがあります。英語のことわざに言う「木を見て、森を見ず」です。

しかし第三の要素もあります。この新しいビジョンを実現することに全身全霊を傾けられなければなりません。本気になって取り組み、実行しなければなりません。



明らかに、規模の大きさは、進化・発展に不可欠ではありません。

さらに、規模はビジネスの最も重要な要素ではありません。

その要素とは「お客様」です。

規模の経済は、企業構造にとっては決定的に重要ですが、お客様には関係のないことです。

お客様はますます洗練され、要求レベルも高くなっています。そのニーズも年を追うごとに多様化し、個性化しています。

これはつまり、皮肉な言い方になりますが、自動車メーカーが巨大化しようとしているのに、市場ではますます分裂、セグメント化、細分化が進んでいるということです。

「18歳から34歳の年代層」とか「中所得層」などといった十把一絡げの一般論は今では通用しません。

現代の課題は、「大衆」に幅広い選択肢を提供することではありません。個人個人が本当に欲しているものを提供することです。

車を購入される方のほとんどは、どのメーカーが一番大きいかをあまり気にされません。実際、大き過ぎるからと、ブランドの通ったメーカーを積極的に避けられるお客様もいらっしゃいます。どこにでもあって個性に欠けるという理由です。

車のユーザーは、メーカーの規模以外の要素に注目しておられるのです。それは何かと言いますと、まず、価値。小型車であれ高級車であれ、どんな車を購入されるにしても、お客様はお買い得感の高い製品を求められます。

次に品質。お客様は、製品のつくりがよいこと、安全であること、またとないアフターサービスを受けられることの保証を望んでおられます。

そして、ブランド。部分的には「信頼」と言い換えてもよいでしょう。ブランドは、何と言っても、どの製品もそのブランドが象徴する価値と品質を届けてくれるとの信頼に足ることを、お客様に保証しなければなりません。

お客様は、自分が共有したいと思う品質、ビジョン、価値を備えているブランドを探しておられるのです。

そして、すべてのお客様を惹きつけて離さない唯一の「トップブランド」というものはあり得ません。お客様の嗜好、願望、考え方、愛着はますます多様化し、これまでになく急速に変化しているからです。

そのうえ、人生のあらゆる側面で、本当に個性的で自分の個人的な嗜好と願望に直接語りかけてくるようなモノを探し求める人々が世界中で増え続けています。


この状況は、規模は小さいが俊敏な対応力があり、ブランドのターゲットを注意深く絞り込み、差別化を明確にできている企業にとってはビジネスチャンスです。

マツダの出番はここです。

マツダ再建の中心要素となったのは、マツダ自身とマツダのお客様との両方の個性を明確に定義することでした。

私たちは、製品開発からアフターサービスに至るまで、あらゆる活動の中心にこの考え方がくるように懸命な努力を続けています。

私たちは、マツダがすべての人々にすべてを提供できるわけではないことを理解しています。世界中のあらゆる市場のあらゆるセグメントで競争することはできません。また、そのつもりもありません。

しかし、選別し、綿密に定義した全世界のお客様のグループ ― それでもかなり大きな規模になりますが ― そういうグループのニーズと願望は、他のどのメーカーよりも適切に満たすことができます。また、そうすることを意図しています。

マツダ車のユーザーは世界中に広がり、年齢も所得階層もさまざまです。しかし、ある明確な価値観でつながっています。

これらのユーザーは、車を単に移動の手段だとは考えておられません。子供の頃初めて味わった動くことの興奮を忘れてはおられません。私たちが「ズーム・ズーム」というキャッチフレーズで定義したあの感覚です。

また、この「ズーム・ズーム」というメッセージは、世界中に氾濫する宣伝文句の中でひときわ注目を浴びるうえで非常に効果的であることを実証しております。共感を呼び、注意深く焦点を絞り込んだメッセージが、中規模メーカーがより大きな競争相手の資金力に打ち勝つうえでどれほど助けになるかを証明することになるでしょう。

私たちの目標は、「スタイリッシュで創意に富み、溌剌とした」車を求められる有望なお客様にアプローチすることです。

これは単なるスローガン以上のものです。マツダのブランド戦略の中でもトップレベルの項目であり、私たちの製品開発プロセスの背後にある推進力でもあります。いわば、強力な重点指向のメカニズムなのです。


重点指向こそが、規模についての私の議論のキーワードです。

マツダでは、極めて明確に定義した顧客ベースに対する、非常に焦点を絞ったブランドとしての約束を果たすため、会社のあらゆる面で力を集中することを目標としています。

私たちの目標は、これら類似の考え方をされるお客様に、他のどのメーカーよりも満足いただける製品とサービスを提供することです。こうしたお客様方のニーズと願望を満たすべく、世界中38,000人のマツダの人々がそれこそ全頭脳を集中しています。

もしマツダが今の10倍の規模だったとしたら、もっとアドバンテージが大きいでしょうか?

私はそう思いません。

超大型タンカーと同様に、組織は大きくなればなるほど急旋回が難しく、望んだ目標地点に向けて正確に舵を取るのが困難になります。

また、実際には私たちが進む道はまっすぐではありません。お客様のニーズと願望は、当然ながら、常に変化しています。

お客様の進路についてゆくだけでは十分ではありません。お客様の目指す方向を予測し、一足先にお客様の驚きと感動を呼び起こす新製品をご提供しなければなりません。

実際、中規模自動車メーカーのマツダには、もっと大規模な競争相手にはない、いくつかの固有のアドバンテージがあります。

マツダのような会社では、部門をまたがって情報を共有し協力しあうことを容易に推進できます。それは、社員同士が個人的にお互いを知っている可能性が高いという単純至極な理由からです。

その結果、非常に俊敏な対応力が身につきます。私たちはそれを順調に達成しつつあります。

マツダが持つもう一つの非常に重要な資産は、私たちが進まなければならない目標への道案内となる、非常に詳細なロードマップです。私たちはこのロードマップを「ミレニアムプラン」と呼んでいます。持続的に収益をあげる体質に戻すための中期ビジネス戦略です。

私たちは、このプランを順調に実現しつつあります。いまや私も経営に参画し、このプランの実行に全力を注ぐ決意をしています。

ミレニアムプランにより、マツダは、昨年度業績を大幅に改善し、黒字復帰を達成しました。82年間の歴史の中で最大の業績改善です。

しかも、新製品の投入がない一年間にこれを成し遂げたのです。マツダの社員は、主としてビジネス課題への認識を深め、それに立ち向かうため果敢な決断をすることで、これを達成しました。

今年はさらに業績を改善すべく順調に進展しています。

財務の立て直しを達成し、ミレニアムプランは成長フェーズに入りました。今年度は新型車を次々に導入します。私たちの新しいブランド価値をフルに備えたニューモデル群で、先に述べた重点指向メカニズムの成果です。

この5月にはマツダアテンザを導入しました。海外ではMazda6と呼んでいるモデルです。販売も予想を上回る立ち上がりを見せています。

8月には、市場で大きな成功をおさめてきた小型車デミオのフルモデルチェンジも控えています。

来年初めには、渇望されているRX-8を市場展開します。ハンドリング、性能、スタイリングいずれをとっても正統派スポーツカーでありながら、新型の大幅改良されたロータリーエンジンのおかげで、大人4人が快適に座れ、荷物も積めるスポーツカーです。

もう一つ、ミレニアムプランの主要な推進力となるのが、マツダビジネスリーダーディベロップメントなどの人事教育プログラムによりマツダの企業文化を変革する取り組みです。

目指すところは、従来からの強みを守っていくことです。すなわち、品質へのこだわり、優れた技術力、世界で最も売れている2シータースポーツカーのロードスター(海外名:ミアータ/MX-5)のようにユニークな製品を開発するコツをしっかりと守り伝えていくことです。

同時に、私たちは、新たな能力も身につけつつあります。環境の変化に合わせて素早く正確に進路を変える能力。私たちの顧客ベースのニーズに揺るぎない焦点を合わせることができる能力です。

マツダはいま非常に大きな弾みをつけつつある会社です。

マツダは焦点をきちんと合わせて開発を進めた新商品が各セグメントでリーダーとなれると確信しております。そして、規模の小ささを有利に活用しているのです。


先ほどもお話ししたとおり、今やマツダは、新たな焦点を定め、市場のトレンドに驚くほど俊敏に対応していくことにかけて、より大きな規模の競争相手よりも優れた、能力を持つと確信しております。

この俊敏な対応力を強化しているのが、マツダが従来から持っているフレキシブル生産での強みです。部品メーカーで進んでいる統合システムモジュールの開発供給能力育成もそうです。

しかし、マツダにはまた別の規模のアドバンテージがあります。フォードの世界的な力を活用できる提携というアドバンテージです。

フォードとのパートナーシップにより、マツダは共同の製品計画を始めとして、調達から流通まで幅広い範囲のシナジー効果を享受できます。


しかし、マツダの持つ明確なブランドの独自性(アイデンティティ)を決して傷つけないように注意しなければなりません。

私たちは、現在も、将来も、青い楕円のフォードマークをマツダのウイングマークに貼り替えるだけの「バッジエンジニア」ではありません。そういうやり方がうまくいかないことは、私たちも、パートナーのフォードもよくわかっています。

お客様は、独特の価値を提供してくれる製品を求めておられます。そこで、「マツダ」独特の製品とサービスを確実に開発し、製造し、販売するため、中心的な技術はすべて社内で確保しています。

フォードグループのプロジェクトのうちどれに参画するのかを決定するのもマツダなのです。マツダの経営陣と私が決定します。他の誰でもありません。

断言しましょう。私は必要なときにはいつでもマツダの利益を強力に擁護します。


マツダは、本当に素晴らしい技術の開発中心基地であることをたびたび示したことで、フォードグループ内でマツダの利益を反映させてきました。

その典型例が、新型直列4気筒エンジンの開発におけるマツダの役割でした。この素晴らしいパワーユニットは、フォードグループ全体で利用されることになっています。

この開発で果たした役割に対して、マツダは絶大な称賛を受け、フォードグループの4気筒エンジン開発中心基地として欠くことのできない存在となりました。


フォードグループにおけるマツダの位置づけを自動車業界で完全に理解していただくには時間がかかりました。しかし、今や認められつつあります。

カーディフ大学のある自動車業界アナリストが、フォードの高級車グループはボルボ、ジャガー、そして最近取得した他のブランドにつき、独自の各国アイデンティティを維持していると誉め称えました。私はこのようなフォードの強みは永年にわたるマツダとの協働に因ると思います。ある種の人々が我々について理解し始めているのは、誠に勇気づけられます。

フォードが各国のアイデンティティを理解しているからと言って、GMもそうだとは限りませんが、ある人々がそのように理解し始めておられることには勇気づけられます。

マツダはフォードの子会社ではありません。

ボルボが根っからのスウェーデン企業であり、ジャガーが英国企業であるように、マツダも日本独自の自動車文化を個性的かつ強力に代表しています。

また、私たちは日本独自のものの見方をフォードグループに持ち込んでいます。

フォードとのパートナーシップは、マツダを矮小化するものではありません。むしろ逆に、マーケットに個性ある提案をし、独自の活力に満ちた明確な企業文化を持つ中規模企業としてマツダを確実に存続させていくものです。


規模の問題について、考えてみたいもう一つの側面があります。先に申し上げましたが、規模の話になるとお客様のことがすぐに忘れられてしまいます。

では、車を購入されるお客様は、実際には誰と話をされるのでしょうか。購入いただいた車を実際に整備するのは誰なのでしょうか?メーカーがいかに大きくても、お客様と直接顔を合わせて応対するのは、ほとんどの国では小さな企業であるディーラーです。

ますます競争が激化する市場で、これらのディーラーは大変な課題をもって奮闘しています。収益性はますます厳しくなり、テクノロジーはますます複雑化。新たな規制で経費も増加します。

こうした課題をさらに困難にしているのが、まさに最前線、商談をまとめる役割を担う販売スタッフに、一層の洗練が切望されているということです。

メーカーにとりお客様との唯一の橋渡し役である販売スタッフを通じて、いかにしてお客様の信頼と信用、そして顧客満足を向上できるのでしょうか?

これは、この業界でまだ解決されていない大きな課題の一つです。そして、やはりこれも、規模の大きさが答えになるとは思えません。

実際のところ、より小規模で対象が絞られた組織の方が成果をあげるのに有利なこともあるでしょう。

すべて答えがわかっていると言っているのではありません。現時点では誰も答えを持ち合わせていないでしょう。しかし、的を射た問いかけであるとの自信はあります。ここが出発点なのです。

しかし、その前に、マツダは主要三大市場での流通を軌道に乗せるため、多くのことをしなければなりません。


私たちの考えでは、小売販売改革の必須条件は、メーカーとディーラーの密接な関係です。欧州での活動でもそこに焦点を当てました。

欧州各国のマツダディーラーは、従来日本の商社や地元資本とのパートナーシップで展開しており、マツダとディーラーとの間には一定の距離がありました。従って、一貫したブランドメッセージを顧客に伝えることや効果的に組織全体で取り組むプロセスは困難でした。

しかし、ここ数年で、欧州での販売台数の80%以上をマツダが直接統括できるようにしました。これで、欧州全体でのマーケティング活動を強化し、ディーラーに、より身近なサポートを提供するための基礎が固まりました。

事実、欧州でマツダは業績を非常に大幅に回復させている最中です。今年度末のマツダの業績には、これがフルに反映されるでしょう。

新型Mazda6は欧州でたいへん好評を博しています。この秋に欧州に導入する新型デミオも、人気を集めるものと期待しています。

これらのニューモデルが欧州で成功すると考える理由は次のとおりです。
- まず、マツダのDNAを真に備えていること。
- 最新鋭のディーゼルエンジンを搭載すること。これは欧州の多くの国で販売成功の鍵です。
- そして、欧州現地生産により、非常に競争力のある価格を設定できることです。ここでもフォードとのシナジー効果が出ています。

このように、私たちは、短期間のうちに欧州で非常に重要な4つの問題を解決しました。
- 第一に、流通体制の強化。
- 第二に、欧州の嗜好に最適のニューモデルの導入。
- 第三に、市場で人気の高いディーゼルエンジンの採用。
- 最後に、価格競争力の回復です。

この成果として、欧州は、マツダがこの一年を成長の年、収益の年とするのに大きく貢献することでしょう。


日本では全く状況が異なります。マツダのディーラーは、巨額の負債に喘いでおり、これは今でも非常に重大な課題として残っています。

しかし、この国の流通ネットワークのほぼ全体を、マツダが管理することになったことから、変革を達成する途も開けてきました。

私たちは、既にこの3年間に大きく前進しました。
- まず、ディーラーネットワークに安定を取り戻しました。
- 主に府県単位で業務を合理化しました。
- さらに、効率を大幅にアップしました。

その成果は明らかです。昨年もまた、マツダの国内ディーラーは営業利益を計上したのです。顧客満足度指標も大幅に改善しつつあります。

業績を向上させる新製品がない年にこれを達成したのです。ショールームに素晴らしいニューモデルが並ぶ今年、どんな成果が出るか、ぜひご注目下さい。


北米でもディーラー関連の一連の課題に直面しています。

まず、最も重要なのが、北米ディーラーのほとんどがデュアルフランチャイズ、つまり複数メーカーの商品を販売しているということです。

当然のことながら、こうしたディーラーは、売りやすく、マージンが最も高い商品をお客様に勧めようとします。

そこで、お客様がマツダ車をファーストチョイスとして念頭におきながらショールームに立ち寄って下さることを確実にすることが課題になります。また、ディーラーがお客様のそうした心の傾きをサポートし、しかも商売になるからそうするというようにしむけなければなりません。

ディーラーの立場で言えば、マツダ車を販売すれば確実に儲かるようにすることが、何より重要なのです。

この課題は達成されつつあります。北米でもやはり新商品の導入はありませんでしたが、北米ディーラーの売上高収益率は1.3%と、ほぼ倍増できました。しかもこれで終わりではありません。今年はエキサイティングなニューモデルを導入し、さらに改善が見込めます。

欧州、日本、北米は当社の三大主要市場ですが、これらに共通する課題があります。それが、マツダブランドです。

今後数年間、私たちは、マツダブランドにエキサイティングなイメージを構築するべく邁進します。潜在的な客層を明確に見極め、その見込み客がワクワクしてくださるようなブランドをつくりあげます。

こうしたお客様が、マツダのショールームに入った瞬間に、あの「ズームズーム」の興奮を感じていただけるようにするつもりです。お客様に、他とは違うマツダの個性を感じ取っていただき、その個性が複数ブランドのディーラーでも際立つようにするのです。

私たちはこの目標を他の目標同様に達成します。なぜなら、マツダの社員は皆、変革が必要なことを理解しています。そしてミレニアムプランにより、非常に明快な変革の途も用意できています。

もちろん、私たちの力ではどうにもならない外部要因もあります。しかし、いまや、私たちは、何が起ころうと素早く適応できる俊敏な対応力があると自負しています。

外部要因でもっとも厄介なのが、うち続く世界的な経済のもろさであることは明らかです。たとえば、日本での見通しも依然としてかなり厳しいままです。

しかし、私たちは、マツダで、日本人が一たび目指すべき目標について力強い共通のビジョンを得たときにどれ程の成果をあげられるかを目のあたりにしてきました。マツダがそれを達成し、自信を取り戻したように、他社も自信を取り戻すに違いないと確信しております。

また、日本の皆さまが、同じ国の人間がマツダで達成しつつある卓越と革新のレベルをご覧になれば、必ずやマツダの商品を信頼して購入して下さるに違いありません。

もちろん、日本にはまだ険しい道のりがあります。マツダもその険しい道をたどりましたので、それはよくわかっています。しかし、私たちはその険しい道を乗り越えつつあり、日本の他社もまた乗り越えられるはずだと確信しています。

マツダは、繁栄するためいずれ世界最大の自動車メーカーになるのでしょうか?いいえ、フォードが俊敏となるために規模を縮小する必要もありません。

つまり、明白なのは、フォードのグローバルな力はフォード自身とマツダにとってカギとなる資産であり続けるでしょう。

しかし、私が皆さんに期待するのは、本日この会場を離れる際し、会社の規模だけがその行末を決めるものではないご理解頂くことです。

重要なのは、車がどうあるべきかについて、私たちとビジョンを共有される世界中のお客様に、そのニーズと要望に一貫して適合する製品を、利益を出しつつ長期に亘って提供できるかということです。

この問いに対する私の答は明快なものです。「必ずできます!」

ご静聴大変ありがとうございました。