社長・役員
スピーチ
マツダ株式会社 2026年度入社式 社長挨拶
【代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者):毛籠 勝弘(もろ まさひろ)】
皆さん、おはようございます。2026年4月1日。 今日は、皆さんが社会人としての第一歩を踏み出す記念すべき日です。ご入社、誠におめでとうございます。マツダを代表して、皆さんを心から歓迎します。
ここに集った皆さんにはこれから始まるマツダでの仕事を通じて、社会人として成長し、実りある人生を歩んでいただきたいと願っています。これまで支えてくださった方々への感謝を忘れず、自らの成長を思い描きながら、一日一日を大切に過ごしてください。皆さんの前向きな努力の積み重ねが、未来を切り拓く原動力になるでしょう。皆さんが配属される職場では、上司、先輩、同僚が温かく迎え入れ、生き生きと仕事に取り組めるようサポートしてくれます。どうか、安心して飛び込んでください。
さて入社式に当たり、私からは、当社の歴史に由来する大切な考え方と皆さんの今後へのアドバイスについてお話ししたいと思います。マツダは、1920年にここ広島で創業しました。創業者・松田重次郎の志は、「工業を通じて世界に貢献する」ことであり、その思いに基づき1931年に三輪トラックの製造を開始しました。当時、日本は経済発展の途上にあり、物資の輸送が不可欠でした。『三輪トラック マツダ号』はその期待に応え、地域や国の経済発展に貢献したのです。しかし、1945年8月6日、広島は原子爆弾の投下により、一瞬にして壊滅的な被害を受けました。当社の前身である東洋工業も多くの従業員を失っています。私たちが想像を絶する惨禍の中で、人々は懸命に今日を生き延び、希望を明日につなげました。原爆投下からわずか3日後には、一部区間ですが路面電車が走っています。路面電車が走ったという事は電気の供給も復活したという事です。また、壊滅的な被害を受けた県庁、警察、新聞社をはじめ多くの機関が、ここ向洋の東洋工業の本社屋に集まり、官民問わず多くの人々の街の復興への拠点となりました。当社の先輩たちも、終戦の4カ月後には、三輪トラックの生産を再開し、広島の復興を支えました。こうした経験を通じて培われた「決してあきらめない精神」は、マツダと広島の絆をより強いものとし、当社の「飽くなき挑戦」というスピリットとして世代を超えて受け継がれ、世界で唯一のロータリーエンジンの量産化開発成功や、現在のSKYACTIVエンジンの技術、そして今、私たちが挑んでいるカーボンニュートラル社会への新たな挑戦などへと、真っ直ぐに受け継がれています。
この、広島の復興を支えたのは、人々が前向きに今日を生き、明日へとつなげようとする姿勢です。復興が進むにつれ、平和の象徴ともいえる「笑顔」が広がっていきました。マツダは、この平和都市・広島に生まれた企業市民として、「人々の笑顔をつくり、社会をより豊かにする」ことに貢献することが企業の存在意義であると、「前向きに今日を生きる人の輪を広げる」をマツダブランドのパーパスとして掲げ、その想いを大切にしています。
当社の『マツダロードスター』は、人馬一体の「走る歓び」という価値を体現する象徴的なモデルです。37年間で累計120万台以上をお客さまの元にお届けし、世界で最も愛される「2人乗り小型オープンスポーツカー」として多くの人々を魅了し続けています。このようなモデルも平和があってはじめてその価値を享受することができます。
私たちは、自動車産業の中では決して大きな会社ではありません。しかし、だからこそ規模ではなく価値で選ばれる会社でありたいと考えています。私たちの規模で企業活動を進めていく上においては、様々な制約があります。その制約をチャンスに変える力、制約を発想や構想の力でマツダならではの価値に変える力が大変重要です。そのためには一人一人が生き生きと活躍でき、創造性を発揮することが大切です。マツダは、ブランドの価値によってお客様に愛され、選ばれ続けることで、企業価値を高めていくというブランド価値経営を、経営の哲学としています。このブランド価値経営を貫くことで持続可能な企業として成長していく、皆さんはその企業の一員となりました。
ここで、私たちの振る舞いにとって重要な考え方として、3代目社長の松田恒次氏が大切にした『一隅を照らすものこれ国士なり』、という言葉を紹介したいと思います。一隅とは、今置かれている場所のことです。今置かれている場所を照らすことができる人は国の宝である、そういう意味ですが、つまり、どこにいようが努力を怠らず、今置かれている境遇、場所、役割で誠心誠意務め上げるよう自分の役割に最善を尽くす人こそが、周囲や組織に貢献する重要な人材である、という意味になります。目の前のお客様、隣にいる同僚、あるいは一本のネジ、一行のコードに対して、誠実に向き合うことです。その積み重ねが、マツダの『走る歓び』を支える信頼となります。
さて、最後に、皆さんへのエールとして、一つ提案したいことがあります。それは、社会人生活のスタートにあたり、「自分の未来を描くこと」です。20代はどんなことに挑戦したいのか? 30代、40代では何に携わり、どう生きていたいのか? そして、50代になったとき、どのような自分になっていたいのか?また、仕事においても、自分は何を極めたいのかを考えてみてください。スペシャリストとして技術を追求したい人、チームを束ねるマネージャーを目指したい人、海外でチャレンジしたい人、あるいは趣味と仕事を両立させたい人——未来の姿は人それぞれです。もし「何をしたらいいかわからない」と思う人がいても、それで構いません。焦る必要はありません。大切なのは、自分に問いかけ続ける、そのプロセス自体にあります。
ちなみに、私自身、入社した頃に今の自分の姿を想像していたかと言えば、答えはノーです。数々の失敗も経験しましたし、思い悩んだ時期もありました。若い頃に描いた未来とは全く異なる道を歩んでいます。しかし、当時の想いを振り返ることで、自分の原点を再認識することができました。皆さんも、まずは“今日の気持ち”を大切にし、社会人としての一歩を踏み出してください。皆さんの今後の活躍を心から期待しています。以上で、入社式に当たっての私の歓迎のあいさつと致します。
共に、がんばりましょう。