本文へジャンプ

第1734号 2003年4月2日

マツダ(株)、優れた歩行者保護性能を持つ
衝撃吸収構造アルミボンネットを開発

 

マツダ(株)は、新しい衝撃吸収構造を採用することで歩行者保護性能を高めた「ショックコーンアルミボンネット」を開発した。これにより、歩行者がボンネットにぶつかった際の頭部への影響を、従来構造のアルミボンネットに比べて大幅に低減できる構造を実現した。本技術は、4月9日国内発表予定のマツダRX-8に採用するほか、今後のマツダのアルミボンネット搭載車に順次採用していく予定である。

ショックコーンアルミボンネット(内側)
ショックコーンアルミボンネット(内側)

 従来構造のボンネットでは、内側に補強用の骨組形状を持つ内板があり、歩行者衝突時にはこの骨組形状部分の潰れ方を調節して衝撃吸収をコントロールしていた。しかしこの構造では骨組形状の交差部では衝撃吸収に不利になるなど、衝撃吸収性能に各部位でばらつきが生じやすかった。今回開発した「ショックコーンアルミボンネット」では、内板の骨組形状の代わりにショックコーンと呼ばれる円錐形状のくぼみを一様に配置した構造を採用した。このショックコーンを並べた内板全体がたわんで衝撃を吸収する仕組みにより、ボンネット全面で均一かつ効果的な衝撃吸収を実現している。なお、このような構造を、衝撃吸収性能の向上を目的としてボンネットに採用するのは今回が世界で初めてとなる。

今回の新しい「ショックコーンアルミボンネット」の特長と効果は次の通り。

1)衝突時の歩行者頭部への影響を大幅に低減
ショックコーン構造の採用により、ボンネット全面にわたって衝撃吸収性能を均一化することを実現した。 これにより、歩行者がボンネットに当たった際の頭部への影響について、欧州NCAP歩行者頭部保護試験に準じた社内テストの結果では、従来構造のアルミボンネットと比べて半分のレベルまで低減することができた。

2)ボンネット内側とエンジン部品との間隔を縮小
  ボンネットとエンジンの間隔は、歩行者の頭部が衝突した際にボンネットがエンジンルーム内へ突出する量を考慮して設計する。今回の構造では、頭部がボンネットにぶつかる場所による突出量のばらつきが少なく、効率よい衝撃吸収ができるため、従来構造のアルミボンネットと比べて1/3(約30mm)縮小した。コンパクトで低重心のロータリーエンジンと併せて、RX-8ではスポーツカーらしい躍動感あふれるスタイリングを崩さない低ボンネットを実現した。

3)剛性確保と軽量化の実現
  ショックコーン面全体で剛性を確保する構造により、ボンネット内板のアルミ材板厚を22%下げたにもかかわらず、従来の1.5倍の「ねじり剛性」を確保した。これにより、1m2当たりの重量が4.87kg/m2と、従来構造を採用していたRX-7との比較で約23%減、またロードスターと比べても約9%減の軽量化を実現した。

 これまで自動車の衝突安全性能については様々な技術開発によって成果を上げてきているが、その中でも現在、性能向上が急務とされているものが歩行者保護性能である。(財)交通事故総合分析センターの報告書によれば、交通事故での死亡者のうち約30%が歩行者であり、さらにそのうち頭部に傷害を負ったことがもとで死亡に至るケースはその約60%に及んでいる。

 マツダでは、今回の「ショックコーンアルミボンネット」に加えて、今後も歩行者保護に関して更なる技術開発を行っていく方針である。

close