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第1732号 2003年2月27日

マツダ(株)、摩擦熱を利用したアルミ材接合技術を世界で初めて開発

- 従来の抵抗溶接に比べて使用エネルギーを約99%大幅削減 −

 マツダ(株)は、自動車用アルミボディの組立工程において、使用エネルギーを大幅に削減でき、かつ少ない設備投資で実現できる、摩擦熱を利用したアルミ材接合技術を世界で初めて開発した。マツダでは、本技術を今年4月に発売予定の4ドア・4シーターの新型スポーツカー「マツダRX-8」のリアドアとボンネットに採用する。


摩擦熱を利用したアルミ材新接合技術(接合工程)

 従来、自動車ボディの組立工程では、大量生産に適した接合技術として「抵抗溶接」が用いられてきた。しかし、アルミボディの場合は「抵抗溶接」ではアルミ材に瞬間的に大電流を流すことが必要となり、大量の電力を消費するとともに、大型の専用設備が欠かせなかった。今回マツダが開発した接合技術は、接合ピンで上下から接合箇所をはさみこみ、ピンを加圧しながら回転させることで生じる摩擦熱を使い、アルミ材を軟化・流動させて点接合する工法である。

今回の新しいアルミ材接合技術の特長と効果は次の通り。

1) 使用エネルギーの削減
新接合技術で使用するエネルギーは、摩擦熱発生のために接合ピンを回転・加圧させる電力のみである。従来の「抵抗溶接」で必要だった溶接用の大電流や冷却水・圧搾空気がまったく不要となるため、使用エネルギーはアルミ材用「抵抗溶接」の約99%減、さらに鋼材用「抵抗溶接」と比べても約80%減となり、同等以上の接合強度を実現しながら、環境への負荷を軽減することができた。
2) 設備投資の削減
大電流を使用しないなどの理由により、従来の「抵抗溶接」で必要だった大規模な電源設備や専用の溶接設備などが不要となり、接合システム全体を簡素化できた。これにより設備投資をアルミ材用「抵抗溶接」に比べて約40%減、標準的な鋼材用「抵抗溶接」と比べてもほぼ同等まで削減できた。
3) 作業環境の改善
従来の「抵抗溶接」などで加工時に生じるスパッタ(火花の飛び散り)が発生しないなど、作業環境を大幅に改善できる。

 自動車へのアルミ材採用は、燃費改善や安全・動力性能の向上につながる車体軽量化の重要なアプローチの一つであり、今後さらに広い範囲での採用が見込まれている。しかし、鋼材に比べて電気・熱を伝え易いという性質により、「抵抗溶接」「アーク溶接」「レーザ溶接」などの溶融接合では接合が非常に難しいという点や、「リベット接合」「メカニカルクリンチ」などその他の接合方法でも、それぞれ、リベットのコストが高価、大型設備が必要になるなど、接合コストが非常に高価な点が課題となっていた。

 今回、世界に先駆けて開発した摩擦熱による省エネルギーかつ低コストのアルミ材接合技術は、将来の自動車アルミ材採用の可能性を広げるとともに、アルミ材を使用するすべての製造業においてもその効果が得られることで、広い範囲での環境保全に貢献できると考えている。

 井巻久一代表取締役副社長執行役員は、「我々は、エネルギーを節約し、環境負荷を低減する工場生産を目指してたゆまぬ努力を続けており、『3ウェットオン塗装』や『セミドライ機械加工』などマツダ独自の技術を開発してきたが、このたび我々の意思を明確に示す新技術を世に問うことができ大変誇りに思っている」と語った。

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