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第1699号 2002年7月17日

マツダ(株)、次世代エンジン「MZR1.3/1.5」を新開発

−新型コンパクトカー用のオールアルミ製直列4気筒エンジン−

 マツダ(株)は、排気量1.3リットルと1.5リットルのオールアルミ製直列4気筒エンジン「MZR 1.3/1.5」を新開発し、今夏発売予定の新型コンパクトカーに搭載する。

 このエンジンは、アテンザとMPVに搭載した「MZR 2.0/2.3」に続く、マツダの新世代エンジンシリーズ「MZR」の第2弾で、走りの感動を追求するマツダのブランドメッセージ「Zoom-Zoom(ズーム・ズーム:子どもの頃に感じた動くことへの感動)」スピリットを具現化するものである。

 同エンジンの開発責任者であるパワートレイン開発本部副主査・水野成夫(みずの しげお)は、「マツダのブランドDNAをエンジン性能において余すところなく体現するために、エンジン設計から生産領域の全スタッフが一つのチームとなってMZR 1.3/1.5エンジンをつくり上げた。これは、世界のコンパクトカー用エンジンの新たなベンチマークを目指して開発した自信作である」と語る。

 「MZR1.3/1.5」は、マツダの次世代を担うコンパクトカー用直列4気筒ユニットとして、

 (1) リニアな加速感
 (2) ライブリィ(活発)なレスポンス
 (3) 力強い加速を生むトルクフルな走り、という動力性能面での価値と
 (4) 環境性能との両立、さらにマツダのDNAである「反応の優れたハンドリングと性能」を
実現するために、全面新開発したエンジンである。これらの開発目標は、「MZR2.0/2.3」で目指した方向性と共通するものであるが、吸気マニホールド・エアクリーナー・PCMなどを一体化したモジュール設計(IAFEM: Integrated Air Fuel Electrical Module)とするなど、コンパクトカー用エンジンに適した新技術・構造も採用している。

マツダMZR 1.3/1.5エンジン(CGイラスト)
マツダMZR 1.3/1.5エンジン(CGイラスト)

■エンジンスペック表
  MZR 1.3 (ZJ-VE型) MZR 1.5 (ZY-VE型)
総排気量 1,348cc 1,498cc
最高出力(JIS net) 67kW(91PS)/6,000rpm 83kW(113PS)/6,000rpm
最大トルク(JIS net) 124N・m(12.6kg-m)/3,500rpm 140N・m(14.3kg-m)/4,000rpm

■実用域での厚いトルクを実現
 マツダの「Zoom-Zoomスピリット」を象徴する走りを実現するために、吸気系では、長さを600mmとした等長ロング吸気マニホールドを採用し、実用域のトルクを向上。さらに、吸気バルブの開閉タイミングを連続的に変えることにより、あらゆる運転領域でバルブを最適に制御する連続位相可変バルブタイミング機構(S-VT)を搭載。日常的に使用頻度の高い高負荷・低中速回転域における出力の向上を実現し、アクセル操作に対するリニアでトルクフルな出力特性を全速度域にわたって提供する。また排気系でも、従来モデル比で吸排気レイアウトを逆転し後方排気とした上で、ステンレス製のロングブランチ4-1排気マニホールドを採用して排気干渉を低減し、出力とトルクの一層の向上を実現した。

■伸びやかで澄んだエンジン音質
 走りの楽しさ、爽快さを提供するため、「MZR1.3/1.5」エンジンでは伸びやかで澄んだ心地よいエンジンサウンドの実現にも注力した。エンジンの運動部分は軽く、構造部分は高剛性化するというコンセプトに基づき、ピストン・コンロッドの軽量化、各部のクリアランス縮小による起振力の低減、アルミ製高剛性シリンダーブロックとロアブロック構造採用によるクランクシャフト支持剛性向上と曲げ・ねじり剛性向上により、エンジン振動を低減して「リニアで伸びやかな音質」を実現した。また、動弁系の荷重低減と、低μ(ミュー)仕上げのカム・タペットにより、エンジン放射音を低減し、スポーティで心地良い「澄んだ音質」を実現した。

■優れた環境性能
 出力と燃費の向上に結びつく高効率の燃焼を実現するために、新形状の燃焼室と10.0の高圧縮比を採用。さらに等長ロング吸気マニホールド内に、タンブル・スワール・コントロール・バルブを装着して適切な混合気を形成することにより安定した燃焼を実現させ、出力向上を目指した4-1排気システムを採用しながら低エミッションを可能とした。また、エンジン前方から吸気して後方に排気する吸排気逆転レイアウトの採用で排気ガスの浄化作用を高めることができた。これらにより、エミッションは「優−低排出ガス車」認定を取得するなど、環境性能と出力性能との優れたバランスを実現した。

■マツダ・デジタル・イノベーション(MDI)によって実現した、卓越のエンジン品質
 マツダは1996年以来、MDIプロジェクトを展開し、CAD/CAMシステムの統合、最先端3次元情報システムの採用などによって、開発・生産プロセス全体の革新を図ってきた。とりわけ「MZR 1.3/1.5」エンジン生産技術の機械加工領域では、3次元の設計データを用い、バーチャルなシミュレーションによる検証を行うことにより、極めて迅速で正確な加工を実現した。さらに、エンジン各部の精度を計13カ所の工程内検査ステーションで自動チェックしているほか、厳格な品質管理を行っている。
 このように、革新的なプロセスに基づいて構築した高精度なラインで製造することにより、生産コストの削減とともに、極めてハイレベルで安定した生産品質を実現している。

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