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第1671号 2001年12月7日

マツダ(株)、新世代モジュール基材用の
高強度プラスチック技術を開発

−大幅な軽量化・低コストを実現−

 マツダ(株)は、この程、モジュール部品を組み付ける基材(モジュールキャリア)用のボディ構造材としてポリプロピレンの新素材を開発するとともに、高強度を実現するガラス繊維複合材の射出成形法を新たに開発した。これにより、モジュールとして従来難しかった多くの部品の一体化による先進的な機能統合が容易になるとともに、コスト・重量の大幅な低減が可能となった。

 この度開発した新素材と技術は、同社の次世代商品群の第一弾として来年導入する新型ミッドサイズカー「アテンザ(海外名:Mazda 6)」のフロント部やドアのモジュール用キャリアに採用され、その後、順次適用車種、適用範囲を拡大していく。

 従来、モジュールキャリアは、高い強度が要求されることから、主にガラスマット強化ポリプロピレンやスチール製プレス部品が採用されてきた。しかしながら、ガラスマット強化ポリプロピレンは、プレス成形のため、部品の効率的な一体化と剛性・強度の確保を両立させることが難しく、さらに成形品に発生するバリを除去するための後加工が必要となるなど、重量、コストの大幅低減は困難であった。また、スチールは複雑な形状の成形が難しいためモジュールとして多くの部品を統合することに限界があり、コスト低減にも繋がらなかった。このようなニーズに合ったモジュールキャリアを作るには、プレス成形に比べて成形自由度が高く後加工を必要としない「射出成形」が好ましいが、一方で、射出成形工程中に補強材として用いるガラス繊維が損傷し強度が著しく低下するため、これまでボディ構造材として採用された例はなかった。

 マツダは、射出成形工程中のガラス繊維の折損を抑制するため、母材であるポリプロピレン樹脂を超低粘度化することでガラス繊維にかかる圧力を低減するとともに、新しい高結晶性のポリプロピレンと複合することで射出成形品の強度を高めた。さらに、大型樹脂部品の成形にも適合するよう、射出成形工程中に圧力がガラス繊維にかかりにくい射出成形技術を開発した。これらを組み合せることで、従来に比べて10倍以上長いガラス繊維を残して成形することが可能となり、射出成形品の強度を約3倍に高め、必要な耐熱性も確保した。以上により、ガラスマット強化ポリプロピレン製プレス成形品やスチールプレス部品と同等の強度を有するモジュールキャリアの開発に成功した。

「アテンザ(Mazda 6)」に採用された新素材

ドアモジュール基材

フロントエンドモジュール基材


■本技術の主な特徴と効果は以下の通り。

(1) 従来のガラス繊維強化ポリプロピレンの3倍以上の衝撃強度をもつ。本材料をフロントエンドモジュ ール・キャリアに採用することで、衝撃強度アップと高い成形性を活かしたレイアウトの工夫で、事故時にクーリングユニットなどの機能部品と車体を守ることができる。アテンザでは同様の効果を従来の鋼板製フロントフレーム耐力の改善で実現しようとした場合に比べ、1台あたり約9 kg軽量化を実現している。
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(2) 超低粘度成分の効果により従来のガラス繊維強化ポリプロピレンおよびガラス繊維強化ナイロンに比べ、30%向上した高い成形流動性が得られ、部品の統合化、薄肉軽量化、成形加工費の低減が実現できる。
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(3) 繊維長の長いガラス繊維で補強できたことと高結晶樹脂の効果により、120℃の高温疲労強度が、 従来のガラス繊維強化ポリプロピレンの約2倍に向上している。耐熱性の高いガラス繊維強化ナイロン樹脂に比べても約17%優れ、ボディ構造体として要求される高い耐久信頼性を満足する。
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(4) 超低粘度成分が製品表面に厚い樹脂層を形成し、ガラス繊維の製品表面への浮き出しを抑え、外観品質を向上できる。従来のガラス繊維強化樹脂では成し得なかった無塗装での外観部品適用を可能とする。
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(5) リサイクル性に優れるポリプロピレンを母材としており、リサイクルしても従来のガラス繊維強化ポリプロピレン並みの物性を確保できる。

 マツダでは今後、この新技術を新世代プラットフォームを採用する新型車・派生車の機能統合型モジュールへの共通展開を図り、商品力やコスト競合力の強化を更に進めていく予定である。
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