本文へジャンプ

第1586号 1999年11月30日

発泡樹脂によるボディフレームの強化技術を開発

—ボディの高強度化を、わずかな重量増で実現—

 

 マツダ(株)は、自動車のボディフレーム内に発泡樹脂を充填させることにより、わずかな重量増でボディの部分的な強度を高め、衝突安全性を大幅に向上できる技術を世界で初めて開発した。

 このたび開発に成功した技術は、強度の高い発泡樹脂と、その発泡樹脂を部分充填する方法及び部分充填するボディフレーム構造の開発に成功したことにより実現したもの。
 ボディ剛性を高めたり、振動・騒音を軽減するためにボディフレーム内に発泡樹脂を充填する技術はこれまでにもあったが、衝突安全性を向上させるほどの高い強度のものはなかった。従来は、部分的に強度を高め、衝突安全性能を向上させるためにボディフレームの鉄板の板厚を厚くしたり、ボディフレーム断面内に補強用の鋼板部品(レインフォースメント)を追加するなどの手段を用いていた。しかし、この手法では重量が増加し、軽量化と衝突安全性を両立させることは困難であった。
 これに対し新技術は、衝突時に生じるボディフレームの局部的な折れ曲がりを抑制することによって衝突時のボディ強度を大幅に高められることに着目して開発したもので、折れ曲がりが生じやすい部位に強度の高い発泡樹脂を充填することにより衝突エネルギーを効果的に分散することができる。発泡樹脂をボディフレーム内に充填するには高い圧縮強度と共にフレーム材との接着強度が必要となるため、新たに開発した発泡樹脂には高い強度を持たせるとともに、発泡後にボディフレーム内面に強固に自己接着する特性を持たせている。実際の製造工程では、シート状にした樹脂をボディフレーム内面にあらかじめ貼り付けておき、塗装焼き付け時の加熱で発泡・充填させる。

ボディフレーム内発泡樹脂

この技術の主な特長は以下の通り。

(1) 鋼板補強の必要がなくなるため、本技術をセンターピラーに採用した場合、同等の衝突強度をもつ鋼板補強ピラーに比べ、1台あたり約6kg軽量化できる。
(2) 鋼板補強のための材料費やプレス金型費が不要となるため、部品コストを約10%削減できる。

 本技術は、第33回東京モーターショーに出展したコンセプトカー「RX−EVOLV(エボルブ)」のフリースタイルドアシステム(※1)に採用し、センターピラーを持たないボディ構造でありながら高いボディ剛性と耐側面衝突性能を実現している。マツダでは今後、この新技術の量産車への展開を図るとともに、高剛性・安全ボディ「MAGMA(※2)」の強化と軽量化をさらに進めていく予定である。

    (※1) フリースタイルドアシステム:フロントドアが前ヒンジ、リアドアが後ヒンジで開閉する。センターピラーレス構造とあいまって大きなドア開口部を確保し、乗降性を向上する。
    (※2) 「MAGMA」:Mazda Geometric Motion Absorption (マツダの全方向衝撃吸収構造ボディ)
close