マツダ(株)は、交通事故を未然に防ぐとともに万一の事故による被害を軽減する技術を搭載した、第2期先進安全研究車「マツダASV-2」を開発した。同社は、運輸省が推進する先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)推進検討会に積極的に参画して研究開発を進めており、この度の車は1995年に完成した第1期「マツダASV」の成果を踏まえて、さらに進化させた実証実験用の車両である。
「マツダASV-2」では、これまで提案してきた「クルマとドライバーが協調して『うっかりミス』を防止する予防安全技術」と、「ミスをおかしてもそれをバックアップする衝突回避技術」をさらに向上させた。その上で、特に発生時の被害が大きい「対人事故」や発生件数が多い「追突事故」に着目し、「歩行者保護」と「被追突傷害低減」の観点からマツダ独自の技術を織り込んでいる。また、今後の実用化を念頭に置き、従来構築してきたシステムを統合化するとともに、ドライバーへの配慮に重点を置いたヒューマンインターフェースにも取り組んだ。

「マツダASV-2」の特長は、以下の通り。
マツダは、ドライバーへの情報提供や危険警報、衝突回避、被害軽減等、総合的な歩行者保護技術の開発に取り組んでいる。「マツダASV-2」では、前方車両のみならず歩行者まで認識するマツダ独自のシステムをさらに進化させ、ドライバーへ的確に情報を提供する。万一の場合は、自動ブレーキを作動させるだけでなく、新たに歩行者への被害を軽減するバンパーを採用している。
● | 歩行者警報システム
スキャン式レーザーレーダーによって、夜間に黒い服を着た歩行者でも45m以上も手前で検知でき、しかも走行路上だけでなく走行路へ進入しようとする歩行者までも認識し、衝突の危険を判断するマツダ独自のシステムを、さらに優れたシステムへと改良した。
今回のシステムでは、レーザーレーダーに2次元のスキャン機構を採用することで、平坦路だけでなく登降坂路においても確実に歩行者を検知できるようにしている。さらに、歩行者を正確に認識するロジックを新たに採用した。これにより、道路のそばに立っている歩行者と横断を始めた歩行者とを判別できるだけでなく、電柱や建物などとは別個に認識できるようにした。 |
● | オールウェザービジョン
夜間や霧、雨の中での走行は前方視界が悪化し、運転者の負担が増え事故を誘発しやすい。
ヘッドランプ下部に配置した小型赤外線カメラによって、悪天候でも前方の状況をインパネ上の表示装置で認識できるようにした。さらに、赤外線カメラの解像度を高めることで、夜間の濃霧でも100m以上先の歩行者や車両を検知できる性能を実現している。 |
● | 歩行者被害軽減バンパー
急な飛び出しなどで衝突が避けられない場合を考え、歩行者への衝撃を緩和するバンパーを装備した。バンパーの裏側にリブ構造の高延性PP(ポリプロピレン)を挿入し、衝突エネルギーを効果的に吸収することで、万一の際に歩行者の脚部への傷害を軽減する。 |
「マツダASV-2」には前方車両への追突を防止するシステムだけでなく、新たに後方車両から追突された場合のむちうち傷害低減のシステムを搭載している。
● | むちうち傷害低減シート
追突された際に乗員の腰がシートバックを押す力を利用し、ヘッドレストを前方に押し出す構造のシートを搭載した。シートバックの内部に組み込んだリンク機構によって、従来のむちうち傷害低減シートと比較して素早くヘッドレストを動かすことで、むちうち傷害の低減を図っている。 |
● | 被追突予知むちうち傷害低減システム
むちうち傷害低減シートを採用しても、運転姿勢によっては頭部とヘッドレストとの距離が大きすぎて十分な効果を発揮できないことがある。マツダでは確実に効果を発揮させるため、追突直前にドライバーの体を適正な着座姿勢になるよう拘束する独自のシステムを開発し、むちうち傷害低減シートと組み合わせた。
このシステムは、車両後部に搭載したCCD距離センサーによって後方車両を検知し、距離および速度から追突を予知する。追突されると判断した場合、追突前にモーターでシートベルトを巻き取ってドライバーの体をシートバックに引きつけ、頭部とヘッドレストとの距離を小さくするユニークなシステムである。
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安全走行をする上で必要なドライバーへの情報は、危険状況に応じて早く、正確に、しかも安全運転に影響することなく知らせることが重要である。
● | 情報提供システム
まだ危険な状況ではない段階では、情報量が多い走行環境についての情報提供は、比較的時間に余裕があることから、視覚への情報提供が適している。そのため、視覚情報が認識しやすい位置、内容、タイミングなどを総合的に研究した結果、ドライバー寄りの高くて遠い位置に絵を主体とした表示を行うことがドライバーの前方注意力を確保する上で有効であると確認できた。「マツダASV-2」では、インパネ上面の中心から右寄りで奥まった位置に、情報提供用の表示装置を搭載している。 |
● | 警報システム
危険な状況に入った段階では、危険回避操作を促す警報はドライバーが危険状況を判断する時間的な余裕がないため、生じた危険状況を瞬時に判断できることが重要である。研究の結果クラクション音など、これまで危険状況で経験してきた音が警報に有効であると確認できた。「マツダASV-2」では、クラクション音などを擬音化した警報を主体にして、瞬時に判断できるようにしている。
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補足資料
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